Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

池上 彰「池上彰のアフリカビジネス入門」

 池上氏が日経BP社・JICAの企画でアフリカ諸国を往訪、取材した際の記録。

 「アフリカビジネス入門」と銘打ってはいるが、じつは大半がJICA事業の紹介。とはいえ主に経済面でのアフリカの現状を分かりやすく知るうえで優れた入門書にもなっている。池上氏の語り口がいつものようにとても分かりやすく、読んでいて情報が頭の中にすっと入ってくる。

 ODA関連のなかでは、とくに広域インフラ、食糧、地熱発電についてどのような課題があるか、また日本のODAがどのような支援を展開しているか、詳しく紹介している。とくに道路整備については、文字面だけだと中々その重要性が伝わりにくいところ、あえてモザンビークの未舗装路で何時間も立ち往生した自身の経験に詳しく触れ、アフリカを訪れたことのない読者にも問題の深刻さが伝わりやすくなるよう工夫している。単なる道路整備であればいまや中国企業に価格競争力があるが、地域全体を見据えた開発計画の策定、特定の港湾・橋梁など高度なインフラ整備、通関業務の簡素化といったソフト面で、まだまだアフリカでも日本の技術の強みが活かせる領域があるということを、自然に理解させてくれる構成になっている。

 アフリカに進出している代表的な日本企業の事業展開についても、企業の当事者に詳しく取材しており参考になる。水を使わない手洗い消毒剤をウガンダで普及しているサラヤ社、認定中古車制度と月賦販売によってケニア市場に食い込んだ豊田通商の事例は、多くのハードルこそあれ、現地の実情・ニーズに沿った製品・サービスを提供することができれば、日本企業によるアフリカでのビジネス展開が決して不可能ではないことを示している。

日経BP社、2013年)

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