Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

吉田 一郎 『国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!』

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 世界の珍妙な国・地域を紹介するウェブサイト「世界飛び地領土研究会」で知られるジャーナリストの吉田氏が、世界の珍妙な国・地域を紹介する本。
  
 本書では、バチカン市国ナウルといった小国から、アトス山やソマリランドといった常識では判断しづない地域、ビアフラ共和国ダンチヒ自由市など今ではなくなってしまった国々に至るまで、幅広く52の国・地域が取り上げられる。現在進行形のウクライナ動乱で話題となっているクリミア自治共和国沿ドニエストル共和国にもしっかり紙幅が割かれている。個人的には、ギリシャ北部にある東方正教会の聖地・女人禁制のアトス山、政庁があるニュージーランドまで5,300kmも離れた南太平洋の孤島・英領ピトケアン島、十字軍遠征にルーツを持ち今も世界各国で医療活動等を続ける領土をもたないマルタ騎士団が、そもそもこれまで存在を知らなかったこともあり、読んでいて特に引き込まれた。

 この本が他の雑学本や紀行文と違うのは、ひとつひとつの国・地域の掘り下げ方の深さ。割かれているページ数はそれぞれ4、5ページくらいだが、たとえばナウルについては当方先日リュック・フォリエ氏の著書を読んだが、本書の記述を読むだけでも、フォリエ氏の著書に書かれている内容の大筋くらいは把握できる。他の国・地域に関しても、どうやって国・地域として成立したのか、それで本当に自活できているのか等々、読者が知りたいと思うポイントがコンパクトにまとめられている。日本語で入手できる情報が限られている国・地域も多い中、海外のマニアックな文献・資料にも当たられて、本当によく調べられていると思う。この方面に関心がある人にとってはハマること間違いなしの一冊。

ちくま文庫、2010年)

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