Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

安部 司 『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』

 『美味しんぼ』で取り上げられていたので即買いシリーズその1。 

 もと食品添加物商社に勤めたトップセールスマン・安部さんが明かす食品製造の舞台裏が、赤裸々につづられています。 
 安倍さん自らが廃棄寸前のくず肉に添加物をぶち込んで作ったミートボールが、娘の誕生日の食卓に並んでいた日。家族が止めるのも聞かず、あわてて安部さんはミートボールを食卓から遠ざけました。
 その日以来、安倍さんは添加物商社を辞し、以来「食品添加物」の生き字引として、各地を講演して回られています。
 
 この本の白眉は、読んでいて気持ち悪くなるほど上げられる食品添加物の具体的な事例のオンパレード。ハム、漬物、明太子といった食品の加工プロセスに、通常文字通り山のように食品添加物が投下される様子が生々しく描写されます。
 添加物の大量摂取は、人類史上ここ数十年ではじめて人類が体験しているフェーズ。日本人はいわば壮大な人体実験の渦中にいるわけでです。

 しかし安倍さんは単なる添加物批判に終始することなく、むしろ「現代人は食品添加物の恩恵を受けている」と喝破します。腐らず身持ちがよく、見栄えがよく、味がおいしく、調理に手間がかからない。それらは全て、保存料や着色料といった添加物のおかげであり、とくに都市に住んでいる消費者にとってはなくてはならないものになっています。
 スーパーでできるだけ加工度の低いものを買う、あまりに安いものには疑問を持つ、そういったことはすぐにでも始められるはずです。自分もやらないといけないのですが・・・苦笑

 そして安倍さんのメッセージは、より深いところに進んでいきます。

「食の乱れは食卓の乱れ。食卓の乱れは家族の乱れ。家族の乱れは社会の乱れ。そして社会の乱れは国の乱れ」
「家庭料理の基本は、加工度のなるべく低いものを買ってきて、自分で調理するということにあるはず」
「加工食品は、子どもたちに「食とはこんなに簡単に手に入るものだ」と思わせてしまう。それを教えてしまう。それが一番怖いのです」

 「食」は、人間社会・生活のすべての根幹を成すものだと思います。日本の「食」がここまで危ないものになっているという現実を知るために、学生、主婦、社会人、すべての人に読んでほしい本です。

                                 (東洋経済新報社、2005年11月)


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