Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

藤巻 健史 『マネーはこう動く 知識ゼロでわかる実践・経済学』

 旧モルガン銀行「伝説のディーラー」藤巻健史さんの一般向け単行本、2007年発行。
 「マネーの動き」を切り口に、日銀の金融政策や為替・株のマーケットの動き、日本経済・世界経済を分かりやすい言葉で解説していきます。

 藤巻さんは円安論者で知られていますが、この本でもいたるところに「輸入インフレ」や「3番目の経済政策としての為替政策」、「金利差の重要性」について触れています。
 要するに、政府による為替介入や利下げ(金利差拡大)を通じて円安を誘導することで、海外からの原材料輸入価格を円建てで押し上げ、国内販売価格を上昇させることで緩やかなインフレを招く、というもの。初めて聞く理論で、思わず「なるほど」と思わされました。

 この本で藤巻さんがおっしゃるもうひとつの予測は、インフレの到来。バブル期の日本の経験と、自身のディーラーとしての経験を踏まえて、「今後の日本は緩やかにインフレに流れていく。物価の上昇はしばらく時間がかかるが、株や不動産を買うことを投資家に勧めている」とおっしゃっています。
 自分はどちらかというと「少なくともあと数年はデフレ圧力が続くのではないか」と思っていますが・・・下り坂の景気と一向にあがらない賃金、そして利上げを執拗に狙い続ける日銀。原油高と食糧高はたしかに気になるところですが。

 もっとも数十年もディーリングの世界で生きてきた方だけに、湾岸戦争イラク戦争までもマーケットの話のネタにしたり、「日本はこれから海外への投資益で食べていくべきだ」とするなど、市場一辺倒主義に過ぎるのではないか、と思わされる部分も幾つかありました。

 インフレーション、マネーサプライ、イールドカーブ資産効果キャリートレード。そして、為替と金利、物価の関係。自分もそうですが、分かっているようで分かっていない金融とマネーの基礎知識。これから勉強してみたい方、勉強し直したい方。藤巻さんが元ディーラーの投資コンサルタントであることを差し引いて、熟読する価値はあると思います。

                                  (光文社、2007年7月発行)

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