Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

山本 直治 『実は悲惨な公務員』

 文部省のキャリア官僚を経て退職、公務員向けの転職支援情報サイトを日本で始めて開設したことで知られる人材紹介コンサルタント・山本さんの新著。おもわずタイトル買い。自分も公務員だし・・

 1.給与・福利厚生
 2.天下り問題
 3.勤務実態
 4.コスト感覚
 5.無責任体質
 6.マスメディアとのかかわり
 7.国民からのクレームの対応

 以上のような目次で、公務員という人々の行動様式、その背景について淡々と述べていきます。山本さん自身が文部省のキャリア官僚でしたし、普段あまり理解されることのないお役所の内部の様子について書かれている情報、おおむね信用して良いと思います。

「新しい官民関係」として結論にあげられている
  ,匹笋靴弔韻困法⇔篝鼎帽佑┐襦
  ¬鮟蠅硫?廖Σ?韻鮑気に見守る
  E椶襪箸は根気をもって怒る
については、もう少し踏み込んで一歩述べて欲しかった感はありますが、就職先候補としてのお役所の実態について関心のある学生や若い世代にはお勧めの本だと思います。

 個人的には、「見えにくいお役所」の最大の原因は、人事の硬直化にあると思います。
 経済産業省は言うに及ばず、たとえば文科省であれば現場の小学校や幼稚園の先生を3年やってみる。農水省であれば3年畑を耕してみる。逆に、現場に近い公務員、民間のサラリーマンやマネジメント、大学の先生などがもっと中央官庁や自治体の上層部ポジションに定期的につく。役所のなかでも、天下り年功序列を原則廃止するとともに、若手・中堅職員への報酬を上げる。

 また、官民関係を考えるうえで、マスコミの責任はとても大きいと思います。単純な公務員バッシングが何も生み出さないことは明らか。政策課題や不祥事の徹底追及と共に、一歩踏み込んだ報道、合理性と実現可能性を持った代替案の開示。
 大多数が熟慮のうえに決定する真に民主主義時代の政策は、透明な場での徹底した議論のうえに成り立つものです。とりわけ「小さな政府」論と「大きな政府」論がせめぎあう現代の日本において。

                            (2008年3月発行、光文社新書