Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

城 繁幸 『3年で辞めた若者はどこに行ったのか -アウトサイダーの時代-』

 富士通で導入された成果主義が瓦解する過程を同人事部内部からつぶさに記したノンフィクション『内側から見た富士通成果主義」の崩壊』(2004年)、そしてベストセラー『若者はなぜ3年で辞めるのか』(2006年)の著者、城さんの新著。自分はどちらも読んだことがあるが、今回の新書も720円以上の価値があると思う。

 この本は前著『若者はな3年で辞めるのか?』の続編にあたる。終身雇用・年功序列に代表される「昭和的価値観」から自らの意思で外れ、「他人任せでなく、自分で舵を取るという決意」のもと歩き始めた人たち、あるいは歩き始めようとしている人たちへのインタビューをオムニバス形式で展開する。これらの挿話じたいも、それぞれが興味深い。そして読みすすめるうち、20、30代の「ロストジェネレーション」が抱える閉塞感に対する、著者なりの答えを、前著より明確に読み取ることができる。
 昨今さかんに謳われる「構造改革」は、平たく言えば社会の富の在り処を移動させる作業、つまり既得権益を切りくずして新しい社会背景(少子高齢化、グローバリゼーション)にあわせて汲みなおす作業を指すが、城さんは、この「改革」の対立軸が「世代間」にあると明確に意識している。

 この切り口については、自分も基本的に賛同している。「昭和型」の利益配分構造を死守し、逃げ切りを図る50代以上の年齢層と、その構造下で労働搾取を受けている30代以下の年齢層。
 改革の要諦は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」時代の日本昭和型システムでも、欧米発の新自由主義システムでもない、21世紀の日本社会にあったオリジナルの利益配分システムを作り上げること。自分たち20代、そしてこれから社会に出る10代に課せられた使命は重いと思う。

 また、つねづね労働・雇用問題が社会のなかでもひときわ重いテーマであるのは、それが「働く」という人間として根幹に関わる行動であるからだと思う。「あなたはなぜ働くのか?」という問いかけは、万人にとって根源的な問いである。自分にとっては「世界に存在する不条理や不平等を減らしていく」こと。これ自体は漠としたフレーズだが、具体的に語るのは、もう少し後の機会に。

                              (ちくま新書、2008年1月発行)