Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

山田 耕平 『自分に何ができるのか? 答えは現場にあるんだ』

 
 TBS「ブロードキャスター」でも紹介された、業界の有名人・山田耕平氏が、マラウィでの青年海外協力隊時代の経験を、親しみやすい文章でつづった単行本。「ブロードキャスター」の留さんこと福留功男キャスターは、「自分は何をしたいのか分からない、そんな方にぜひ読んで欲しい一冊。悩むよりやってみる行動力こそ、人生を切り開く第一歩。」と紹介文を書いている。

 山田さんはこの本で、彼の「フィルターを通じて」マラウィの人々の生活、隊員時代のエピソード、そして何よりHIV予防のメッセージを込めたラブソング「ディマク・コンダ(愛してる)」を作詞・プロデュースしたエピソードを紹介している。
 毎日のように身近な人が「葬式」を迎えるマラウィの現実に直面し、HIVの蔓延(マラウィの感染率は15%。平均寿命は39歳。)に対する問題意識から、音楽という媒体を使った予防活動を思いつく。そこからの彼の行動力は圧巻。マラウィのアーティスト、同じ協力隊のカメラマン隊員らとともにレコーディング、PVの撮影に取り掛かる。甚平を着て歌う日本人シンガー Kohei Yamada はこうして生まれた。国営放送局へのプロモーションからから始まり、「ディマク・コンダ」は瞬く間にマラウイのヒットチャートNo.1に駆け上がる。若者世代のHIV予防に莫大なインパクトを与えた。

 この本を読み終えた後に残るのは、爽快感と、彼のフットワークの軽さ・行動力へのリスペクト。なぜ彼はここまで一つのことを「成し遂げる」ことができたのだろう。 
 彼がマラウィの任地・カロンガに初めて着いたとき、現地の方から「お前は何ができるんだ?」と問いかけられるシーンがある。普通の人であれば、裸一貫でアフリカの田舎にやってきた身。逡巡があってしかるべきだが、彼は「何でも出来るよ。一緒にやっていこう。」と答えた。ここに彼の強さがあると思う。頭をまっさらにして、思いついたら、フットワークはとにかく軽く。人の輪をつなげて、大きな「うねり」を作っていく。
 「ひとりで出来ることなんて、何もない。自分ができないことは、他の才能ある仲間に協力してもらえばいい。・・・素晴らしい仲間、先輩、そしてマラウイアンに出会えたこと。それがなによりも俺の宝なんだ」と彼は結ぶ。
 
 日本のすべての若い世代に、とくに悩みながら海外への足を踏み出せないでいる人たちに、ぜひ読んで欲しい一冊です。とにかく、すごい。

           -アフリカの水を飲んだ者は、アフリカに帰る-

                                 (2007年12月発行、東邦出版)