Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

ジャン-クリストフ・ヴィクトルほか 『地図で読む世界情勢』

 
 原著は『Le Dessous des Cartes.Atlas geopolitique(地図の下にあるもの、地政学の地図)』。フランス衛生放送テレビ局の番組から派生したいわゆる「地図本」で、2005年の出版後フランスで大好評を博し、2007年に邦訳版が出版された。

 二部構成で、第一部は、「アメリカ、世界覇権への道」「EUとロシア、深遠なる戦略」「中東はいかにして世界の火種となったか」等、テーマごとの地図に世界を切り分け「現在の世界はなぜこうなったか」について解説。第二部は、地域紛争や核拡散、気候変動や食糧・石油、経済グローバル化に焦点を当て、地域ごと、ときには世界全体の地図を使って「これから世界はどうなるか」を読み解く。

 一冊手にとっていただければ分かると思いますが、とりわけ自分のような「地図好き」にとっては、きれいに整えられて必要な情報が整理された地図を眺めているだけでも楽しいもの。そのうえそこに付されている解説が簡潔にまとまっていて興味深く、どんなに世界情勢に詳しい人でも、2つ3つ新しい発見があるのでは。
 自分にとっては、今ちょうど職場にウクライナモルドバのゲストが来ていることもあり、旧ソ連である両国が政治・社会・経済的にいかにEU圏と対峙しているかについて触れた第二章「欧州とロシア」、スエズパナマに次ぐ第三のPromising Routeとして注目を集めつつあるカナダ北西の「北西航路」について触れた第七章「持続不可能な世界」に、特に興味をひかれました。

 他にも、カリーニンググラード、中央アジアコーカサス地域のパイプラインの構造、中東の水資源問題、インド洋のディエゴ・ガルシア島、アフリカの「ドラゴン」モーリシャス等、世界を読み解くうえで面白いトピックが満載。しかも全て地図付き!
 国際情勢に関心ある方、地図が好きな方、おススメです☆
 

                         (日本語版:鳥取絹子訳、2007年発行、草思社