Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

橋下 徹、堺屋 太一 『体制維新 大阪都』

 現大阪市長・日本維新の党代表代行の橋本氏が自身の大阪都構想についてその概要と意義を説明した本。堺屋氏も対談形式で補足を加えている。

 日本を数年留守にしていることもあって、正直なところ大阪都構想がどういうものか不勉強だったが、本書を読んですっきり頭の中に入った。同氏の議論を聞く限り、大阪都構想大阪市特別区に再編し、広域行政は府に一元化、住民に身近な行政は首長公選の特別区に委ねる)については理がある。災害リスクの高い東京と並びうる、国際競争力を備えたもう一つの極が日本に必要、という議論も正である。

 大阪市(市町村人口で全国2位)と横浜市(同1位)を対比させると分かり易い。橋本氏は、神奈川県東部に位置し県西部の 市町村と比較的つながりの弱い横浜市(人口360万人)については、むしろ多くの権限を市に認める方向性は有りだという。他方で大阪市は、文字通り大阪府の中心に位置し、インフラを始め同市の広域行政が府、ひいては関西経済圏全体に大きな影響を与えることから、むしろ東京と同様に特別区として再編、広域行政を府(ないし大阪都)に任せてしまうのが良いと主張する。具体的な広域行政事案の例としては、JR大阪駅北ヤード開発、大阪湾岸ベイエリア開発、大阪市営地下鉄大阪市域内の港湾・幹線道路を挙げている。

 最近の情勢を追ってみると、構想実現は間近のようである。政令市と隣接市町村で人口200万人以上あれば特別区を設置して良いとする大都市地域特別区設置法が2012年8月に国会で成立、最新の報道では、同法に基づき大阪府市両議会の議員から成る特別区設置に向けた法定協議会が2013年2月に設置の見込となっている(http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC2702A_X21C12A2AC8000/
)。これは文字通り大阪のカタチを変える大改革であり、経済低迷と財政赤字に沈む大阪を再生できるか、その成果が問われる。橋本氏のショーマン的な言動やタカ派としての主張には賛否両論あるが、同氏が近く国政に出てくることはほぼ間違いなく、個人的には同氏が主張する道州制導入を核とする地方自治改革には期待するところ大きく、まずは本構想の成否を注視しておきたい。

(2011年、文春新書)

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