Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

小西 慶三 『イチローの流儀』

 イチローという選手は現役ながら既に伝説の存在となりつつある。MLB10年連続200本安打を達成した打撃、同じく10年連続ゴールドクラブ賞の堅守、「レーザービーム」とも称される強肩、加えて走塁・盗塁でも高いパフォーマンスを見せる。

 本書は、共同通信者のシアトル・マリナーズ担当記者として取材を続けてきた小西氏による、イチロー取材の集大成である。イチロー選手についての数多くのエピソードが紹介されているが、2002年のシーズン中、現レイズのカルロス・ペーニャに打撃に関する教えを請われ、深夜のステーキハウスで自らの野球理論について語るエピソードがひときわ印象的。小西氏によれば、同選手は「他の選手に教えることをいとわ」ず、それは自らの経験から作り上げた「スタイルに絶対の自信がある」からであり、また何よりも「向上心を持つ者への共感」があるが故だと言う。

 本書に限らずメディアを通じた情報から読み取る限り、イチロー選手が普段抱いている感覚は、「孤独」に近いのではないかと思っている。バット・コントロールと野手としての総合性において、現役の中で彼に比肩する選手はほぼいないと言って良い。黙々と己の技術を磨き上げ続ける、その姿はまさに職人芸の世界である。

(2009年、新潮文庫


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/F/Foomin/20190829/20190829193540.jpg