高野 秀行 『ワセダ三畳青春記』

　前項で紹介した高野氏が学生時代から11年間暮らした早稲田のアパート暮らしを綴ったエッセイ。
　と書くとどうってことないように聞こえてしまうが、これが抱腹絶倒のエピソード満載でとても面白い。舞台は家賃1万2千円、三畳一間のアパート「野々村荘」。大学の探検部の仲間と一緒に未知のドラッグを試したり（高野氏自身が試すのだが、経過・症状が面白くないという理由でザイルで括られたまま半日放置されてしまう　笑）、「日本惰眠党」を結成し「寝すぎて疲れて、また眠るという『永久睡眠法』」を実践する隣人が居たり、彼女といちゃつく騒音？に端を発する学生対社会人の「第一次野々村大戦」が勃発したり。人間味あふれる「野々村荘」生活が少し羨ましくなる。
　第一回「酒飲み書店員大賞」受賞。普段の仕事から軽く現実逃避してモラトリアムの時間を楽しみたい方にお勧め。　
（2003年、集英社文庫）