Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

峯 陽一 編著 『南アフリカを知る60章』

 前回紹介した平野氏の「南アフリカの衝撃(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/34077704.html
)」はコンパクトに南アの経済・政治を知る上で有用だが、もう少し時間がある方には、社会や対外関係、文化についてもページが多く割かれた本書も薦めたい。発行も2009年と新しいし、豪華な執筆陣をそろえてもいる。

 当方も南アについて多くのことを本書から教えてもらった。1960年代から1983年にかけて実に少なくとも350万人(全国民の10分の1に相当!)もの人々がホームランドへの強制移住を余儀なくされたこと。アパルトヘイト後の真実和解委員会(TRC)に対する人々の評価は複雑であり、和解は必要という自覚をもつ一方、「和解を追及することによる社会的な影響や効果はなんだろうか」という問いに明確な答えを出しきれていないこと(この状況はバルカン半島ルワンダカンボジア等の例にも当てはまる)。アパルトヘイト時代には日本でも反アパルトヘイト運動が盛り上がり、アパルトヘイトをめぐる国内・国際世論の形成に一役買ったこと(当方が物心ついた時にはすでにアパルトヘイトは終わっていたので・・・)。
 
 欲をいえば、冒頭で編者自身が述べておられるように、同国の豊かな自然・気候についてのまとまった記述があればなお良かった。

明石書店、2009年)

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