Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

加藤 周一 『読書術』

 評論家・作家である加藤氏が、1962年に高校生向けに記した『読書術』の改訂版。

 当初高校生向けに書かれた本とはいえ、内容は大学生や社会人にも十分通じる。古典には「精読術」、一般の本には「速読術」、さらには本を読まない「読書術」や難解な本向けの「読破術」。最近書店にあふれる読書術についての本は、ほとんどこの本の一部か全部の模倣とまで言っても良いかもしれない。

 情報化時代の現代においては拾い読み・流し読みの「速読術」が必要であること、読まないでも内容を把握する方法として雑誌の書評やダイジェスト版を活用すべきこと。あの大評論家の加藤氏であっても、実践していた読書術はとても合理的・実際的で、一般人の当方としては何故かホッとしてしまう。

 個人的には、外国語の本を読む「解読術」の項が一番参考になった:「要するに原則としては、必要な本はやさしい本である。その必要でやさしい本を利用することに力を注ぎ、たのしみのための読書、ことに文学の読書は、日本文学で満足する。それを外国文学でおぎなう場合には、主としてえらい小説家の日本語訳を読んで済ませる―これが多くの人々にとって、外国語の本に対する一番合理的な態度ではないかと思います。」要するに、仕事などでどうしても必要な場合を除いて外国語での読書を極力避け、限られた時間のなかでは一番効率的な日本語で大量のインプットをせよ、ということである。

 高校生くらいのときにこの本を読んでおけばちょうど良かった。最近は公立の学校でも「朝の読書タイム」など読書促進の取り組みが増えてきているようで、その方法論としてまず本書が紹介されると良いのでは、などと思った次第。

岩波現代文庫、2000年) 


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