Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

横石 知二 『そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生』

 先日、「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町の「棚田オーナー制度」を利用して田植えに出かけた。そのとき同町のホテルの売店で購入したのがこの本。「葉っぱビジネス」の仕掛け人として知られる横石氏の自伝である。

 横石氏は1979年に同町農協の営農指導員として働き始める。「年間4000時間、多いときで4500時間は働いていた」というほど働きづめるなか、1986年に大阪の市場への納品の帰り道、難波の『がんこ寿司』で「ツマモノ」と運命的な出会いと発見を果たす。以来、同町の生産者にハッパをかけ続けて開発・販売を推し進め、年間売上高2.6億円に達するところまで同町の「彩」ビジネスを成長させた。
 横石氏は現在、「彩」の販売促進などを行う第三セクター「株式会社いろどり」の社長に就いておられる。今回少しながら直接お目にかかる機会に恵まれたが、温和な風貌に芯の強さを感じさせる方であった。

 横石氏は、本書の冒頭で「『彩』事業を”システム”と、葉っぱを”商品”とだけ見ていては、このビジネスの勘どころは押さえられない」と言っている。上勝町がメディアで大きく取り上げられて以降、他の地域でも同様の成功例を目指す動きがあるのではないかと思うが、「農家からの要望に対しては、私は100%応えてきた」と言い切るだけの自負を備えた横石氏を中心として、同町の生産者が日本各地の市場と結んできたパイプの太さ、商品開発・改善に向けて積み上げてきた努力は、一朝一夕に真似しようと思っても真似できるものではない。横石氏は、本書後半で「彩」ビジネスの「成功のヒミツ」として「現場主義」や「人と人との絆」などを挙げておられるが、まさに「言うは易し、行うは難し」。「仕事」とは何か、その真髄を見せつけられた思いがした。

 業種・形態を問わず、全てのビジネスマンにとって参考になる。「FOOMIN PARADISE」2010年上半期オススメ本ランキング1位。


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