Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

吉田 秋生 『BANANA FISH』

 サリンジャーの小説になぞらえられた謎のドラッグ「バナナフィッシュ」をめぐるサスペンス・コミック。1985年~1994年に「別冊少女コミック」で連載され、1997年に小学館文庫として再度出版。最初に読んだのは大学のサークルの部室でしたが、時間を忘れて一気に11巻読み終えてしまったのを覚えています。2009年明けて早々、アマゾンで古本セット販売されているのを見つけ、思わず購入してしまいました。

 舞台は1985年のニューヨーク。その幻覚・催眠作用の強さゆえ、マフィアや米国政府の高官、軍の重鎮が兵器として目をつける。ニューヨークのダウンタウンでストリートキッズを束ねる200オーバーのIQに第一級の戦闘力を併せ持つ脅威の少年、アッシュ・リンクスは、神の手に導かれるように、マフィアや合衆国政府の陰謀に巻き込まれていく。

 8巻、コルシカマフィアの後継者として登場するアッシュが、左翼政権が牛耳るホンジュラスでのバナナフィッシュの秘密利用を米軍高官に働きかける:
「あなたの愛する合衆国は、もはや借金しなければ戦争ひとつできないのだということをお忘れなく」

 最終巻、マフィアとの抗争を終えた後、戦闘の師匠であるセルゲイとの別れの際に、生涯唯一の友人・英二への思いを込めてつぶやく:
「もう二度と会わない。・・・たとえ一生会えなくても・・・思うことくらい許されるだろう?」
 
 アッシュの本名・アスランは「夜明け」という意味。エピローグ「光の庭」、英二が撮影したアッシュのポートレイト「夜明け」が現れる場面で、物語は本当の終幕を迎える。
 個人的には、自分の名前の中にも「夜明け」を意味する漢字が入っていることに、奇妙な縁を感じずにはいられない(自意識過剰?)。
 
                (1994年に完結、小学館文庫で全11巻+別巻『ANOTHER STORY』)

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