Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

最上 敏樹 『いま平和とは-人権と人道をめぐる9話-』

 国際法の権威・ICUの最上先生による2006年発刊の新書。2004年度「NHK人間講座」のテキストをもとに加筆修正した内容です。

 国連安保体制、PKO、国際人道法、人道的介入、ジェノサイド、核。国際社会の安全保障と平和、人権についてのさまざまなトピックが、決して感情的にはならない落ち着いた筆致で分かりやすく語られます。9話ごとに完結する形式ということもあり、大変読みやすいです。


・国連安保体制の概要は?
⇒一般的な戦争を含む全ての武力行使は基本的に違法。ただし「合法」な武力行使として、①個別自衛権の行使、②(国連軍)による強制行動、③国連の「授権」による武力行使、がある。

・国連安保体制に照らしたイラク戦争の評価は?
アメリカによる「授権なき」武力行使。国連体制への挑戦ともいえる。大国による国際秩序のかく乱という意味では、第二次世界大戦前の国際連盟の状況に酷似すらしている。

・ドイツと日本との差異は?
⇒ドイツは戦後賠償を進め、またシューマンプラン等を通じて隣人との和睦をすすめる機会に恵まれ、早くに共同体樹立のプロセスを主導した。他方日本は、個人補償を怠ったこともあって中国・韓国・アジアの国々から過去の清算が充分でないとみなされており、また隣人との関係構築の必要性も戦後復興期のドイツに比べれば相対的に低いものであった。東アジア共同体の成否は、「日中間に真の信頼関係が築き上げられ」るかどうか、にかかっている。


 その他にもたくさんのトピックが盛り込まれています。平和学、紛争、国際法といった分野を勉強されている方、興味のある方にとっては入門書としておすすめです。

                                   (岩波新書、2006年)



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