Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

落合 博実 『徴税権力 国税庁の研究』

 
 もと朝日新聞編集委員・落合さんによる国税庁の内実に迫るドキュメント。門外不出のマル秘資料をはじめ、現役時代の豊富な対国税庁の取材経験に基づいて構成されています。
 以前からタイトルだけは知っていた本なのですが、最近仕事で国税庁の方々とお付き合いすることが増え(企業財務や税務担当部署ではありませんが 笑)、改めて手に取ってみました。
 
 印象に残った点&参考になった点をいくつか↓


国税庁の情報収集と資料分析の能力は、警察や検察をもしのぐ。

国税庁にとって税務調査の最大の難物は、非課税の金を使える政治家と宗教法人。特に与党や創価学会には調査の手が及びにくい傾向がある。(もちろん金丸事件のような例外はある)

・税金の「入り」を守る国税庁と、「出」を監視する会計監査院。両組織の職員のモチベーションには差がある。長い間官公庁の放漫財政を許してきた後者の責任は重い。強制捜査権の有無が一因か。

・査察部(マルサの通称で知られる)の調査は、国税犯則取締法が根拠。強制捜査権あり。納税者側には黙秘権がある。他方、調査部の調査は、強制捜査権がない代わりに納税者に黙秘権を認めておらず、「疑わしきは推計課税」が可能。

 
 霞ヶ関国税庁を筆頭に、全国の国税局や税務署で働く国税の組織の人数は5万人以上。その全ての方々が、日本政府の財政活動を支えるために毎日徴税業務にいそしんでいるわけです。
 自分が普段お付き合いさせていただいている方々も、少なくとも自分が知る限りは使命感を持って職務に取り組んでいる生真面目な方が多い、という印象。この本を読んで、改めて国税という組織の強さを思い知った気がしました。
 確定申告等で普段国税の組織と接点のある方、自分のように源泉徴収でなかなかお目にかかる機会がない方、いろんな方におすすめできる本です。

                                  (文藝春秋、2006年発行)

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