Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

松本 仁一 『アフリカ・レポート -壊れる国、生きる人々』

 『アフリカで寝る』『アフリカを食べる』『カラシニコフ』などの著作で知られるもと朝日新聞記者・松本さんの新刊。南ア、ジンバブエ、日本の歌舞伎町!などを取材してまとめたアフリカの現状を描くドキュメント。

 松本さんは、ジンバブエや南アらのアフリカの指導者たちの腐敗と統治責任の放棄、そしてそこから生まれる民衆の労苦を辛らつに描写します。

・なぜ権力者の腐敗が起こるのか?
⇒部族のアイデンティティ。植民地政府に引かれた国境をもとにした現在のモザイク国家のなかでは、特定の部族が権力を握るや、あっという間にその部族による国家の富の収奪が起こる。(「公の欠如」)
⇒外部からの攻撃に対する危機感の欠如。明治維新期の日本が良い反例。その外圧が、国民国家と近代化を助けた。

 ケニアのナッツ加工会社・ケニアナッツ社、ウガンダの衣料品メーカー・フェニックス社。日本人創業者が起こした二つの大会社の事例も紹介されており、アフリカでの産業発展のひとつのモデルとして参考になります。

 個人的には、アフリカ大陸をひとくくりにして語ることに若干抵抗はありますが、それを差し引いても日本語による現地の「ナマ」の情報は貴重。アフリカに関心ある方はぜひご一読を。


(2008年8月発行、岩波新書