Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

雁屋 哲、花咲 アキラ 『美味しんぼ』

 いわずと知れた日本の「食」漫画の金字塔、『美味しんぼ』。
 先日ついに102巻「至高と究極の行方」が発刊され、至高と究極、双方が「相手を喜ばせる朝・昼・夜の膳」をテーマに対決し、ついに海原雄山山岡士郎が和解します。中川やチヨによって語られる若き日の山岡と雄山の団欒のエピソードは必見です。
 
 思えばこの漫画の連載が始まったのは、自分が生まれた年と同じ1983年。当時のグルメブームに警鐘をならし、「本当の美食とは何か」をテーマに、古今東西あらゆる食材と調理を紹介してきました。
 正直、47巻の山岡・栗田の結婚披露宴で終了したほうが良かったと一時思っていましたが、それから早10年以上が経過。その間、日本の「食」にまつわるさまざまな課題-生産者による不正、地方の伝統料理の継承の問題、食品添加物への警鐘-についても積極的に取り上げ、問題提起が行われました。
 画風やストーリーのマンネリ化、海原雄山の人物像の変質など、漫画としてはさまざまな批判もありましたが、それを差し引いても、この漫画が社会に対して示してきた貢献の度合いは大きいものです。というか、もう漫画という領域を超えたところに居る作品になってきているように思えます。

 1巻から47巻までは、文句なく面白い。
 48巻から100巻までは、興味のあるトピックだけつまみ食いするのが良し。
 101巻「食と安全」、そして102巻「至高と究極の行方」は買う価値ありです。

 結局のところ、本当の「美食」とは、決して高価でなくても本当に純粋で健康な食材を、食べる人や家族の団欒のために、まごころを込めて調理すること。簡単なように聞こえますが、この簡単なことが、今の日本ではどれだけ難しくなっていることか。
 いま自分は独身でいつも松屋やコンビニでささっと済ませてしまうような食事ばかりですが 笑、いつか家庭を持つようなときのことを考えて、この漫画がくれたメッセージをずっと大切にしていきたいと思います。
                             
                               (小学館、2008年8月時点で102巻まで発行)


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