Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

鹿野 嘉昭、酒井 良清 『金融システム』

 先日ご紹介した『金融論をつかむ』の著者でもある鹿野先生、酒井先生による、その名のとおり「金融システム」についてのテキストブック。好評のため2006年に第3版が発刊されています。
 
 金融システムとは「金融取引の円滑な遂行の確保・維持を目的として構成された社会的仕組み」のこと。銀行や証券会社といった金融機関、中央銀行、金融市場と決済システム。金融システムは一国の社会経済を支えるため、実にさまざまな要素によって構成されています。
 著者いわく、「これから金融のことを学ぼうとする学生諸君や、金融システムについての体系的な知識を習得しようとしている若手の社会人を想定して」書かれた本。『金融論をつかむ』と同様、「これ以上ない」というくらいに平易に書かれています。

 個人的には、以下の2点が改めて参考になりました。

1.米欧の金融システムの成り立ちと現状 
 話題に事欠かない連邦準備制度を軸とするアメリカの金融制度。1999年に経済統合を遂げたユーロ圏の金融制度。その成り立ちや特徴について、20世紀初頭から簡単に振り返りつつ、要点を抑えて平易に触れられています。
 国内の金融制度について論ずる本には枚挙に暇がありませんが、各国の金融制度の比較を示してくれる本は少ないように思います(まだ自分が知らないだけかもしれませんが)。

2.中央銀行制度の生成と発展
 中央銀行はなぜ存在するのか― この当たり前のような質問に正面から答えられる人はなかなか少ないのではないでしょうか。中央銀行という制度・組織じたい、19世紀の欧米に端を発する歴史的にはまだまだ経緯の浅いものです。中央銀行がない金融システムは機能するのか。そして逆に、中央銀行しかない金融システムは機能するのか。
 歴史的な経緯の説明と明快なロジックのおかげで、中央銀行生成の背景と、そこからくる中央銀行のあるべきミッションについて、改めて理解することができました。

                                    (有斐閣アルマ、2006、第3版)

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