NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班 『ワーキングプア 解決への道』

　NHKスペシャル『ワーキングプアⅢ　解決への道』（2007年12月16日）の単行本化。
　著者によれば、以前このブログでも紹介した『ワーキングプア　日本を蝕む病』を「実態編」として、その「解決編」にあたる本、とのこと。
　ワーキングプアの問題への国内外の取り組みを紹介し、解決への方途を探るのが本書の趣旨。収録されている主なエピソード：

・1997年通貨危機後のIMF構造融資によって非正規雇用が急増、ワーキングプア問題の深刻化がすすむ韓国の現状
・「ワーキングプア先進国」アメリカの転落するホワイトカラーの現状と、ノースカロライナ州の「地域限定」バイオ産業での職業訓練プログラムの紹介
・貧困の連鎖を防ぐためのイギリスの試み：コネクションズと呼ばれる相談員、チャイルド・トラスト・ファンド、シュア・スタート、社会的企業、Etc.
・日本国内の自治体やNGOによるさまざまな取り組み：釧路市の「自立支援プログラム」Etc.

　鍵は、「社会的孤立」からの脱却と、職業機会の提供によって「生きがい」を取り戻すこと。　
　挿げ替えのきく只の労働力として捉えられるのではなく、名前を覚えてもらえるような温かみのある職場と住居を持つことが、人間にとっては何より必要なことなのではないか、と改めて思います。

　今の日本は、今後数十年にわたって「貧困大国」のフェーズに入り込む最初の段階に居るような気がします。一握りの人々以外の全ての人に「明日は我が身」と本気で感じさせる社会保障制度の危うさと、薄くなっていく他者との助け合いの精神。少なくとも、この危機感は全ての人が共有すべきと思います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2008年7月発行、ポプラ社）