Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

宇山 智彦 編著 『中央アジアを知るための60章』

 今の仕事で何かと関わることの多い中央アジアですが、恥ずかしながら、最近に至るまで「あまり良く知らない」地域のひとつでした。さすがにまずいと思い、入門書として購入したのがこの一冊。同地域の社会や文化、政治、経済について、各国ごとに、ときに横断的な視点から、同地域の研究者の方々が60のエピソード紹介形式でまとめた本です。
 
 資源やグレートゲームシルクロードイスラム教といったキーワードで以ってひとくくりにされがちな中央アジアですが、この本を読むだけでも、国ごとに大きく文化や歴史、情勢が違っていることが良く分かります。恥ずかしながら、この本を読んで初めて知った事がいろいろ↓

カザフスタンセミパラチンスクでは、旧ソ連の核実験場として、計500回以上の地上・地下核実験が行われ、今でも同地域周辺の村には被曝者の方がおり、日本の広島大学長崎大学が調査や医療支援を行ってきた
ウズベキスタンの中にあるカラカルパキスタン共和国は、独自の憲法を持っており、名目上は完全に独立した格好になっている。
・タタルスタン共和国がいまだにロシア連邦の一部であり独立国家でない理由は、旧ソ連時代に「共和国」ではなく「自治共和国」だったから。たとえば「共和国」であったトルクメニスタンソ連憲法によって形式的に認められていた離脱権を行使して独立を果たしたが、「自治共和国」タタルスタンはソ連憲法上、離脱権を認められていなかった。
 
 挙げだせばきりがないですが、とにかく「きょうみ深い」の一言。「行ってみたい地域ランキング」の上位に急遽おどり出ました、中央アジア。「中央アジアってどんなとこだっけ?」と、ふと気になった人は、ぜひ手にとってみてください。
                                  (2003年、明石書店