Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

魚住 昭 『官僚とメディア』

 『渡邉恒雄 メディアと権力』『野中広務 差別と権力』といった政治やメディアがらみのルポルタージュで知られるもと共同通信記者・魚住氏のベストセラー。
 官僚による情報操作やメディアとの癒着についてはたびたび週刊誌等で話題になりますが、このようにまとまったかたちでメディアと行政の本質に切り込んだ本は貴重だと思います。


・官僚によるメディアの情報操作はあるのか?
⇒たとえば2006年の耐震偽装問題。国交省の官僚達は、巧みな情報操作によってメディアと世論の矛先を一部の業者に押し付け、建築確認システムの形骸化や1998年の建築基準法改正によって検査業務の民間委託と限界耐力法の導入をもたらした自身の責任を覆い隠した。
 「客観報道主義」という言葉は、マスコミの側にしばしば情報発信者への批判的な目を失わせ、無意識のうちに情報源に記者をひざまずかせる。

 
・メディアの現場はどうなっている?
⇒忙しさが増すとともに、「他社に抜かれるな」「訂正を出すな」「経費節減しろ」といった指令が現場に降ってくる。労働強化と管理強化が組織の活力を失わせ、記者たちが持っているみずみずしい感性や想像力まで奪い去ってしまっている。「管理を強化し、効率化を追及すればするほど組織はガタガタになる」。


・メディアは誰のものか?
⇒「経営者や株主や広告主のものではなく、無数の読者のものであるはずだ」


 たった211ページの新書ですが、この本を通じて、普段読んでいる新聞やテレビの報道内容の内実がより深く見えてきます。また組織としてのメディアの管理強化、それに伴う「現場の疲弊」についてはうちの会社にも当てはまると思われる点がいくつかあり、自省の意味で、自分自身も大いに参考になりました。

                                (2007年4月、角川書店


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