Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

冷泉 彰彦 『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』

 東大、ベネッセ、ベルリッツを経て現在プリンストン在住、冷泉さんによるアメリカ二大政党にまつわるトピックスを紹介した新刊。
 会社の上司から「アメリカ政治の対立軸がよく分かる」と紹介され、ジムでサイクリングマシンを漕ぎながら読了。

 確かにアメリカの二大政党と大統領選挙ほど、世界中で耳目を集めつつも、「分かりにくい」トピックもあまりないと思います。安全保障や経済政策はともかく、妊娠中絶をはじめとする生命倫理、同性愛、など、日本人には分かりづらい論点が盛んに議論されます。


共和党民主党の対立軸は?
⇒建国以来、両者の主張・対立軸にはぶれがある(具体的には第4章)。
 ただし基本的には、「民主党=過剰なまでの自己肯定、自分達がアメリカの国是を護持する本流の存在という自負。そして人間中心主義」、「共和党=懐疑心と独立心。政府権力や徴税権に対する疑念、イスラムをはじめとする異文化への疑念。人間中心主義への懐疑と、そして唯一の支えとしての宗教的な自己肯定」、といったーワードで読み解くことができる。
 両者の争点は、社会価値観の問題を見るときに、とりわけ大きく国民の間に現れる。具体的には、銃規制、生命倫理、同性愛者間の結婚、といった問題。


・日米関係への示唆は?

1.アメリカの「小さな政府」と日本のそれとの違い。アメリカでは、多額の寄付文化や非営利団体あるいは個人による自主的な公共活動が活発。また、根本にある背景-広大な大陸と英政府からの独立の歴史、共和党に見られる政府権力への懐疑-といった事情を踏まえないままアメリカ流の小さな政府を導入することは危険。
2.環境・エネルギー問題についての同盟国としての責任。共和党に見られる「自然への畏怖がゆえに、人間が蓄積してきた技術は無制限に使用してよい」という意思は、欧州のほか日本によって一定の歯止めをかけなければならない。
3.アメリカの若い世代の日本文化との同調性。オバマ・キャンペーンに見られる若者達は、完全に「マリオ世代」であり「ポケモン世代」。ソフトカルチャーにおける共同の価値観は、日米間における今後の重要な財産。


 本日、アラスカ州女性知事のサラ・ペイリン氏がマケイン氏のRunning Mateとして副大統領候補に選らばれたばかり。思わず目を引くこの人選によって、大統領選の行方はいっそう混沌としてきました。
 個人的には、国連中心主義・多分化主義、国民皆保険制度導入を標榜する民主党のほうにどうしても寄ってしまいます・・・が、いずれにしても両党の対立軸をしっかり理解しておくことが、いまの日本人にとっても必要のように思います。さくっと読めて参考になる一冊。

                             (2008年8月発行、日本経済新聞出版社
 
 
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